宮城・気仙沼にネパールカレー店オープン 元登山家が被災地を活気づける

世界最高峰エベレストを擁するネパールの家庭の味を楽しめる店が、太平洋に面した宮城県気仙沼市の唐桑半島にある。店主内海正義さん(69)は、ヒマラヤ山脈を渡り歩いた元登山家。自慢のスープカレーで、東日本大震災で傷ついた古里を「元気にしたい」と腕を振るう。(共同通信=奥村湧太)

スパイスの香りと美しい山々

扉を開けると、スパイスの香りとともに、雪化粧をした美しい山々の写真が目に飛び込んでくる。内海さんは、ネパールの村で暮らしたこともあり、雄大な自然の魅力を客に語る。「行ってみたくなるでしょ」と笑顔で話す。店内には、日本を代表する登山家長谷川恒男さんと写った1枚も飾られていた。

内海さんは高校卒業後、山梨、長野両県にまたがる八ケ岳の山小屋で働いている時に長谷川さんと出会った。体力を買われ、一緒に世界の名だたる山々を巡ったが、妻の出産のため参加しなかった1991年の登山で、長谷川さんは雪崩に巻き込まれ亡くなった。

震災後の思いと新たな挑戦

内海さんは「長谷川と登る山が好きだったからね」と語り、一線から離れ東京都の新宿区役所に就職した。2011年の震災では、津波と火災で故郷の気仙沼市に大きな被害が出た。力になりたかったが、被災地のがれき受け入れなどに追われ、東京を離れられなかった。古里は震災後、若者が減り空き家が増え、内海さんは「早く戻りたい」と思いを募らせた。

昨年春に退職すると、空き家を改装し同年7月に店を開業した。スープカレーはネパールの家庭料理をアレンジし、地域の人の意見も聞き試行錯誤した。約20種類のスパイスを混ぜながら辛さを控え「子どもも食べられる」と誇らしげに語る。大きく切った地元産の野菜は口の中でほろっと崩れる。

唐桑半島の拠点として

内海さんは「観光を登山に例えれば、食べる場所は『ベースキャンプ』」と話し、魅力が詰まった唐桑半島に長く足を止めてもらうための拠点にしたいと考えている。今年11月上旬、仙台市の大学院生2人がバイクで訪れた。鈴木奏和さん(24)は6月にも来店し、卒業旅行の行き先をネパールに決めた。この日は旅程を内海さんに相談し、「実感が湧いてきた。トレッキングが楽しみ」と嬉しそうに語った。

店名の「KanaKana(カナカナ)」は、ネパール語で「ご飯ができたよ」という意味。内海さんは「お客さんにはカレーの味もネパールの話も、唐桑の風景も楽しんでいってほしい」と語った。

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