職人たちの魅力と技術が織りなす、身体で表現するサーカスの世界

「ワーカーズ!」公演の舞台でアーティストたちに囲まれる田中未知子。木製のやぐらが軽妙な演技を支える=2025年1月、高松市
「ワーカーズ!」公演の舞台でアーティストたちに囲まれる田中未知子。木製のやぐらが軽妙な演技を支える=2025年1月、高松市

 

 6人のアーティストの手から手へと木材が宙を舞う。舞台にプラットフォームを組み、その上に高いやぐらを作っていく。時にコミカルな動きで笑わせながら、命綱なしの軽業が繰り出される。柱がきしむ音、きわどいバランスに観客の心が揺れる。
 「瀬戸内サーカスファクトリー」は、香川県を拠点とする現代サーカス集団だ。「ワーカーズ!」と題した公演は「肉体労働者への賛歌」がテーマ。とび職人のような衣装を着たアーティストが演技を見せる。
 「身ひとつで危険な仕事をこなす職人たちの格好良さを表現したかった」と主宰者の田中未知子(たなか・みちこ)(55)が語る。「社会とのつながりの中で、どんなサーカスを見せられるか模索している」。

日常をぶち破る

 現代サーカスに出合ったのは2004年、地方新聞社の事業局で働いていた時だ。海外から招かれた公演を見て「目の前を覆っていた幕が切って落とされた気がした」。
 札幌市に生まれ、幼い頃から絵を描くのが好きだった。フランスで美術史を学んで帰国後に地元で就職したが、自分らしさが求められない仕事に物足りなさを感じた。根っこはあるのに枝葉が存在しないような感覚。そんな日常をぶち破ったのがサーカスだった。「体いっぽんでまっすぐに生きている人たちがいる」。2007年に退職し、サーカスと生きると決めた。
 欧州などで1970年代以降に盛んになった現代サーカスを取材し、著書「サーカスに逢いたい」にまとめた。日本では大衆向けの娯楽の印象が強いが、海外ではダンスや演劇と融合した新たな芸術表現となっている。文化事業として公的支援する国もある。

 日本にも優れたアーティストがいるが、文化として根付いているとは言えない。「自分は演技することはできないが、彼らの活動を世界に発信する拠点をつくろう」。そんな思いが高まり、瀬戸内国際芸術祭の運営に関わったのをきっかけに2011年に香川県に移住した。

風土に根ざす

 2012年に瀬戸内サーカスファクトリーを設立。「風土に根ざしたサーカス」を目指し、廃校となった小学校を練習場に公園や寺社などで公演を重ねた。しかし、大がかりなフェスティバルの出費がかさんで2019年ごろに財政的に行き詰まった。
 「やめて北海道に戻ろうか」と病床の父に打ち明けたが、「まだ帰って来ちゃだめだ」と言われて思いとどまった。そんな時に新型コロナウイルスの流行が始まり、活動の場が制限されたアーティストが東京などから移住してきた。体制を立て直して再出発した。
 出演者が命を預ける舞台装置には十分な安全が求められる。鉄工所や木材会社と意見を交わす中で、職人たちへの尊敬の念が芽生えた。豊かな経験と高い技術を持ち、危険を伴いながらも社会を支える存在。ただ大企業に安い賃金で使われ、職業として正当に評価されていない面もある。

 「サーカスを通じてみんなの認識を変えたい」。それが「ワーカーズ!」に結実した。やぐらを製作したのは香川県丸亀市の「山一木材」の職人。部品や柱に精密に穴が開けられ、差し込むだけでしっかり固定される。木の香りが漂い、なめらかな手触りが信頼感を与える。まるで舞台上の「もう一人の主役」だ。

失敗じゃない

 瀬戸内サーカスファクトリーが最近力を入れているのが「ソーシャルサーカス」と呼ばれる活動だ。子どもやお年寄り、社会の中で生きにくさを感じている人たちとサーカスを通じてつながる。
 山一木材の敷地内にあるアトリエでは子どもたちのサーカス教室が開かれ、吉田亜希(よしだ・あ

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