被爆の真実を描くフィクション小説 神戸の作家が旧長崎医大を舞台に
神戸市出身の児童文学作家、鳥居真知子さん(73)が、原爆によって甚大な被害を受けた旧長崎医科大学(現長崎大学医学部)の学生たちが被爆者救護に尽力する姿を描いた小説「被爆した長崎医科大へ 神戸から」を出版することを発表した。長崎大学で行われた記者会見では、「当事者には及ばないが、原爆の実態を一端でも次の世代に継承したい」と語った。
小説の背景とテーマ
本作は、大学の資料や関係者の証言を基にしたフィクションであり、主人公は神戸出身で旧医大に進学した学生である。彼は医師や看護師たちと共に、被爆者の救護に取り組む姿が描かれている。重傷を負いながらも救護活動に尽力した故永井隆博士(1908~1951年)など、実在の人物も登場し、当時の厳しい状況をリアルに伝えている。
鳥居さんは、幼少期に永井博士の著作を基にした歌「長崎の鐘」を聞いていたことが、原爆に対する関心を深めるきっかけとなったと述べている。また、2022年に始まったロシアのウクライナ侵攻を受けて、核兵器問題に対する意識が高まったことが執筆の動機になったという。
執筆への思いと期待
鳥居さんの執筆活動には、医師だった祖父が入市被爆したという個人的な背景も影響している。長崎大学大学院2年の平林千奈満さん(24)は、執筆に協力し、「薬や物資が不足する中で診療に当たった状況など、子どもたちがより深く知るための一冊になれば」と期待を寄せている。
この小説は、単なるフィクションにとどまらず、原爆の実態やその影響を次世代に伝える重要な役割を果たすことが期待されている。鳥居さんの作品を通じて、多くの人々が歴史を学び、核兵器の問題について考えるきっかけとなることを願っている。
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