原発避難地に新たな風 福島・双葉で移住者がコーヒー店をオープン

東京電力福島第1原発事故後、11年半にわたり全町避難を余儀なくされた福島県双葉町に、テイクアウト専門のコーヒー店が新たに開業した。この店の店主である深沢諒さん(28)は、「人が訪れるきっかけをつくりたい」との思いを抱き、帰還した町民はまだわずかであるが、活気ある町を夢見ている。店名の「オープン・ロースタリー・アル」には「町と共にありたい」という願いが込められている。

開店の祝福と地域のつながり

2月下旬、住民や関係者ら約50人が集まり、「かんぱーい」と声を上げながら開店を祝った。店はJR双葉駅前に新しく完成した交流施設「FUTAHOME(ふたほめ)」の一角に位置している。深沢さんが焙煎した豆の香ばしい香りが漂い、集まった人々の笑顔が広がった。

深沢さんは秋田市出身で、大学卒業後の2020年7月から地域おこし協力隊として福島県の内陸にある三島町の観光協会で働き始めた。彼の人生を変えたのは、協力隊の活動を通じて出会った焙煎士との交流であった。彼が入れてくれたコーヒーの香りに心を揺さぶられ、「自分のコーヒーで人々を笑顔にしたい」という思いが芽生えた。

地域への思いと移住の決断

協力隊の任期を約1年残し、2022年5月には原発事故の影響が大きい県沿岸部の浜通り地方に移住を決意した。「事故後、再び前へ進もうとする地域にコーヒーを届けたい」との思いから、当初は店舗を持たず、イベントなどで自慢のコーヒーを提供してきた。次第に深沢さんの入れたコーヒーのファンが増え、彼の活動を支える友人の輪も広がっていった。

「やはり店を持つならここだな」と自然に考えるようになり、クラウドファンディングで資金を募り、念願の店舗を双葉町にオープンさせた。将来的には、焙煎体験や客の好みに合わせたオリジナルコーヒー作りができる環境も整えていく予定である。

町の現状と未来への希望

町では2022年8月に避難指示が一部解除されたが、2023年4月1日時点で町内に暮らす人は182人にとどまっている。これは震災前の3%ほどに過ぎない。「町に今いるのは明るい未来を見据えて挑戦する人ばかり。みんなの日常が豊かになれば」と深沢さんは語り、にぎわいのある町を目指してコーヒーを入れ続けている。

深沢さんの活動は、地域の再生に向けた一歩であり、コーヒーを通じて人々の心をつなぐ役割を果たしている。彼の夢が実現する日を、町の人々は心待ちにしている。

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